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「滋賀県土地開発公社事件D」 余談

湖上パトロール

その後、二人から何度か食事など誘いの電話があったが、当然、私は断り続けていた。
そんなある日、事務局長から「特ダネがあります」という電話があった。
「特ダネ?」と私は内容を聞こうとしたが、事務局長は笑うだけ。
(ま、たまには会ってみるか)と思い、私は出かけてみることにした。
そこでの事務局長の話に、私は半信半疑ながら、内心驚かされた。

「滋賀県警の警備艇を協会で買いましたんや」

詳しく聞いてみると、古くなった大津署の警備艇を落札で購入したという。
翌日に大津署で調べた結果、間違いなく警備艇一隻が競売に出され、協会が落札していたのだ。
こうした民間への払い下げは手続き的に問題ないらしい。

「この船で湖上パトロールしますんや」

得意顔の局長に案内されて雄琴港に行ってみると、確かに警備艇が係留されていた。
警察関係の設備・表示や船体記号は消去されていたが、黒塗りの船体や船室の様子は警備艇のままだ。
「整備や検査も終わったので、来週、第1回目のパトロールに出ます。ぜひ一緒に乗ってくださいや」という
誘いに、私も正直なところ乗船してみたくなった。

数日後の昼下がり、雄琴港へ行ってみると、警備艇の甲板から事務局長が手を振って私を呼んだ。

「ええ天気やし、早速行きましょか」

狭い甲板の船首部分で私と事務局長は琵琶湖の西岸を琵琶湖大橋へ向かった。
操舵室では初老の男が舵を操っている。
事務局長に確認すると、男は小型船舶操縦の免許を持っているということだった。

「琵琶湖が汚ないのは、雄琴のトルコから排水が原因やと言われてる。そやから毎週、見回ることにします
んや」と、警備艇は琵琶湖大橋から瀬田川の入り口までを巡回。確かに雄琴から南は浮遊物が気になった。

当時、琵琶湖の汚染問題が問題化しており、事務局長は「ワシらも船の上からゴミを集めてますねん」と、
トルコの従業員らを招集して湖面の清掃に努めているらしい。

私は、この体験を新聞ローカル面の話題記事にした。
警備艇の写真付で掲載したので、会長と事務局長は大喜びだったが、読者やマスコミ他社の記者から
冷ややかな批判を受けたのは言うまでもない。

このほかトルコ嬢に元アイドルが応募していたり、トルコ街の火事騒ぎで、会長と事務局長は、トルコ嬢の
身上書や出火原因の秘密情報を提供してくれた。あまり褒められない話ばかりだが、県警防犯部も私の
情報を頼りにしていたことは、汗顔の至りながら付記しておく。

作家 津島稜