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冷えたビール

いつまでも東日本大震災に心を痛めていても仕方がない。
とはいえ、暑い夏を迎え、避難所生活の不愉快さや、他人の家庭で居候生活の心苦しさ、
不便な仮設住宅の窮屈さを強いられる人たちの毎日を思うと、やりきれない。
夏が過ぎ、台風シーズンになり、そしてまた厳しい冬がやって来る。
私のような無力な人間は、何もできないことを悲観するぐらいしか能がない。
呑気にナイター中継を見ながら、冷えたビールを飲むささやかな楽しみでさえ、申し訳ない気がする
同じようなことを思う人も多いはずだ。

「被災者、被災地の救援と復興に全力をあげる」という、この国のトップの空念仏はどうだろう。
もう、聞き飽きたといっても差し支えない。
その空念仏を唱えてきた連中は、冷えたビールを飲みながら、
連日、クーラーの利いた部屋で「ああでもない。こうでもない」と、したり顔で空疎な会議を続けて
いるのだろう。
いや、冷えたビールどころか、もっと贅沢な飲み物や料理を楽しんでいるに違いない。
こんなことを想像する自分も、いじましくなってくる。
だが、例えば首相官邸であれば、多くの衛視がおり、一流の料理人が待機し、事務官もいる。
それに、関係者を送迎する車、これらはすべて税金で賄っているのだ。

見苦しいパフォーマンスは勘弁して欲しい。
次々と、慌てて被災地を訪れて視察を繰り返すトップたちの、あの間抜けた表情に感激する
被災者は極めて少ないと思う。
どうせ彼らは、ホテルの特別室へ帰り、自分の映っているテレビを見て、笑いながら付き添いと
一緒に冷えたビールを飲んでいると想像するだけで、腹が立つ。

私が、このようにひがんだ考えを持つのは何故か。
それは、テレビや新聞で情報を得るからにほかならない。
実際に国のトップや中央官庁の人間と面談したこともなく、親しく交際している人間もいない。
それなのに私の周辺では、多くの人間が同じような感覚、意見で政府を批判する。
それは、マスコミが伝えてくれる情報の影響だ。

そのマスコミはどうだろう。
被災状況を伝える映像や記事は、私たちを驚愕させ震えあがらせる迫力があった。
まさに事実を報道する役目を果たした。
だが、問題はそのあとだ。
地元メディアは、文字通り命がけで、被災地、被災者に焦点をあてた報道を続けている。
しかし、中央のメディアは、政府高官と同じような目線になってしまった。
たしかに政府の対応に鋭く批判はする。
全国民に救援を呼びかけ、義援金も予想以上に集めてくれたが、その報道の拠点は東京や大阪に
置いたままである。危険な目に遭えと言っているのではない。
報道の原点は現場にある。
その日の仕事を終えて飲むビールは、被災地で、被災者と同じ位置で味わってこそ、
真実を報道できるのではないか。

作家 津島稜