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貧しい男

貧しい男が、
ひょんなことから当たりくじを引き、村の仲間の応援と後押しのおかげで、宮殿に招かれた。
宮殿の中は、素晴らしいご馳走が並び、目が眩むほどの黄金財宝が山のように積まれている。
粗食しか食べられなかったうえに、いつも空腹だった男は、おそるおそる料理皿に手を伸ばし、
口に入れた。
未だかつて味わったことのない美味しさだ。宮殿の人たちも、警護の衛視たちも、誰も咎めない。
男は、それをいいことに、別の皿にも手を伸ばし、肉も魚も果物も、少しずつ口に入れていった。
咎める者はいない。
(宮殿の人は、毎日、こんないい暮らしをしているのか。それも、働きもせずに…)
その日から、男は当たり前のようにご馳走の皿に手を伸ばし、酒や飲み物も存分に楽しみ始めた。
自分だけではもったいないので、村の仲間を宮殿に呼んだ。
彼らも最初はおそるおそるだったが、次第に慣れてしまい、男と同じように宮殿生活を送り始めた。
今まで、汗を流し、空腹に耐えてきたのが嘘のようだ。
村の仲間でも、宮殿に呼んだのは男の気に入った友だちだけで、
気に入らない者は、呼んでやらない。
男は、黄金財宝にも手をつけてみた。やはり、誰も咎めない。仲間たちも男の真似をする。
その財宝は、男の住んでいた村をはじめ、あちこちの村人たちが働き、苦しい中から宮殿に
納めたものだということを、男はうすうす気がついたが、知らない顔で誤魔化した。
そんなある日、遠い村で大災害が起こった。
男は「かわいそうに」「助けてあげたいな」と言うものの、それだけだった。
心配そうな顔をして「財宝を少しわけてやろうか」「誰かを助けに行かそう」と思いついたように
口に出しても、自分では動こうとしない。
遠い村の人たちは、じっと我慢をしていた。男が口先だけということを知っても、怒らなかった。
結局、男は宮殿に居続けて、時間だけを無駄に過ごした。宮殿の外からは見えないのをいいことに。

しかし、そんな男の振る舞いを神様は見ていた。
男が貧しいときよりも、もっと心が貧しくなったのをちゃんと見ていた。
神様は「さて、この男にどんな運命を授けようか」と、いま考えている。

こんな寓話が、あるはずもない。読んでも面白くないどころか不愉快になる。
今まで、権力者を非難し、貧しく弱い人たちを救おうとカン高い声を張り上げていた男が、
ひょんなことから権力の座に着くと、その浅ましい本性がバレてしまった。
他人(国民)の金を自由に使えるし、その場限りの無責任なことは言い放題。
気に入らない人間は遠ざけ、厳しい批判には意味不明な言い訳をする。
国旗掲揚、国歌斉唱を小バカにしていたくせに、最近は国旗を背に鷹揚な態度で、
国歌が演奏されるなかを晩餐会に登場する。
この男より、はるかに凡俗な私でも、この男の話が100年後の寓話になるとは思えない。

作家 津島稜