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座間の殺人事件の困難な捜査

神奈川県座間市の9人連続殺人事件は全国に衝撃を与えている。

大量殺人事件と言えば2016年(平成28年)7月、同じ神奈川県相模原市の障害者施設での19人殺人事件が
まだ記憶に新しい。
この事件はたった1日の犯行で、目撃者も多く、動機も明らかだったため、犯行の態様や捜査にほとんど矛盾
がなく速やかに解決した。

これに対し座間事件は、犯行に至る経緯や時刻、動機など事件全体に疑問が多く、捜査の全容解明には
かなりの時間がかかりそうだ。

そうした点を捜査(警察)側の視点で考えてみたい。

事件が発覚したのは今年10月30日。被害者の女性の兄が捜索願を出した結果、妹とのSNSの交信情報な
どから、犯人と交信していた女性が警察に協力、囮(おとり)役を買って出て、犯人の自宅へついて行った。
それを尾行していた警察官が事情を聞こうと、犯人の自宅マンションに入った結果、とんでもない疑いが
浮上したのだった。

ワンルームマンションの室内にあったクーラーボックスから9人の頭部が見つかったのには警察官も驚愕し
たことだろう。翌31日に逮捕された白石隆浩容疑者の犯行に間違いないにしても、被害者の多さに戸惑った
はずだ。

通常の殺人事件の場合、警察は被害者の特定、犯行場所、殺害時期、凶器や手段、動機などについて
捜査方針を固める。事件発生後、現場で作業を始めるのは鑑識捜査だが、それも警察の常識とはかけ
離れていた。(何という現場か)というショックがあったに違いない。

警察にとって、殺人事件の最大の目的は犯人の検挙にある。
そのためには「証拠」が最も重要とされ、昔から「自供は証拠の王」「現場は証拠の宝の山」と言われている。
犯人しか知りえない「秘密の暴露」がキメ手となり、遺留品や犯行の痕跡が保存されているからだ。

ところが、今回の事件はこれまでの捜査の常識を逸脱している。

まず被害者の特定。警察は司法解剖、関係のありそうな遺留品、指紋、DNAの鑑定、行方不明者や捜索願の
出ている人物との照合を順次、確実に進めていく。ここまでは素人でも予測できるが、問題は時間だ。
9人は約3か月の間に現場で殺害されたであろうことはほぼ間違いないにしても、個々の被害者それぞれに
ついて、前述の手続きを進めなくてはならない。
多数の家出人捜索願との照合、顔写真や身体的特徴などを綿密に検証。家族・知人らの関係者からの
事情聴取を進めるのだが、腐敗や白骨化によって、途方もない時間が必要になる。
しかも、同時に9人となると、気が遠くなりそうだ。

さらに、現場の状況がある。文字通り「証拠の山」なのだが、夥しい押収物の全てに番号を付け、小さい物
(微物を含む)は透明のビニール袋に入れて保存。
それ以外は捜査本部へ持ち帰り、備え付けの家具や設備は現場で保存する。
おそらく数百点に上るものと見られる。
それらを1点ずつ物理的、科学的に検査し、記録しておかなければならない。

信用性は別として、自供調書も百枚単位で捜査本部に残されているはずだ。

こうしてみると、殺害現場は1ヶ所で、全ての証拠品があり、自供も強要していないように思える。
捜査の環境は万全だが「パンドラの箱」を開けてしまった結果、底が見えそうにない。
つまり、全ての証拠を揃えて起訴に持ち込み、有罪を確定するまでは極めて困難な捜査に耐えなくては
ならない。もし白石被告の死刑が確定すれば、捜査員の努力の成果は歴史的に語り継がれることだろう。

作家 津島稜