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金正日氏の逝去

60年代の安保紛争が華やかなりしころ、
東大の大河内一男総長が、卒業生に贈った「肥えたブタになるよりも、痩せたソクラテスになれ」
という言葉を思い出した。
出典は経済学者のJ.S.ミルの著作らしいが、その言わんとするところは、分かる。

朝鮮民主主義人民共和国(以下、北朝鮮)の金正日総書記が、
突然、亡くなったことは国内外でも大きく報じられた。それほどの人物だったということなのだろう。
だが、その風貌、伝えられている言動から「偉大なる将軍様」「人民のための卓越した指導者」
とは、とても信じられないと言う人は、私以外にも圧倒的に多いはずだ。
人を、外見で判断することはよくないとは分かっている。
金総書記の父、故・金日成主席は、堂々とした風貌のようだった。
それに比べると、身長でもかなり差があり、あの独特の髪型や、表情を賞賛するのは難しい。

それに、腹が出た体型は飽食の証拠と言える。
北朝鮮は、まず間違いなく食料危機が続いており、餓死者が毎年、記録的な数字を示していると
聞く。
これは、私ごときがわざわざ書かなくても、金総書記が国民の窮状を知りながら、
自己の欲望のために贅沢三昧に明け暮れていたと糾弾する声を、
内外のマスコミが報道してきたことだ。
「偉大なる将軍様は質素に暮らしていらっしゃる」などといった情報をいくら流しても、
それを信じていた国民は何人いたのだろうか。

60年代の安保紛争では、全学連のリーダーたちが、
北朝鮮を「理想郷」と喧伝し「千里馬(チョンリマ)運動」へ多くの人たちを勧誘した。
私の友人も、何人かがそれに憧れ、共鳴していた。
「千里馬」とは、1日に千里を走る馬の伝説で、それにあやかって金日成主席が社会、経済を大発展
させようとして始めた運動である。
金総書記もそれを倣おうとしたようだが、60年を経過しても、軍備と核を除けば、
何ひとつ達成できていない、と指摘しても過言ではないだろう。

独裁者であっても、すべての国民が幸せであれば、非難を浴びることはない。
だが、金総書記の場合は、その反対だった。
とても「痩せたソクラテス」のように、深い思索のなかで豊かな人間性を求めていたとは思えない。

死者を冒涜し、尊厳を損なわしめるのは許されることではない。
とはいえ、世界中の冷淡な反応はいかばかりか。
急死の情報は千里馬より早く、インターネットを含め、
あっという間に金総書記を「利己的な、肥えたブタ」として歴史に刻みつつある。

作家 津島稜