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悲恋の涙を鴨川に流す

冬晴れの日、久しぶりに京都へ出かけた。

友人の会社が三条大橋の近くにあり、鴨川の冷たそうな流れを見ながら、その会社へ向かった。
別に大した用事があるわけでもなく、友人と二人で昼食にしようとビルの外へ出かかったとき、
友人の携帯電話が鳴った。彼が通話を始めて間もなく「えっ」と大きな声を出した。

私が「どうした」と尋ねると、彼は深刻そうな声を出し「実は、困ったことが起きた」と話し出した。

友人の話によると、彼の社員が交際している女性が手首を傷つけたうえ、鴨川に入り自殺を図ったというのだ。
女性は二十歳前の未成年の女子学生で、恋の破局が原因らしい。
社員と女子学生は鴨川の河原で言い争い、彼女は叫び声をあげて、社員に殴りかかって顔を傷つけた。
それを見た通行人が110番。所轄署の警察官も駆け付けた騒動になった。
女子学生は大したけがではなかったが、精神的に錯乱状態が続いているという。

社員には妻子がある。女子学生もそれは承知だった。
取引先である学校へ通っていたときに彼女と知り合ったらしい。
いわゆる不倫なのだが、女子学生は彼に夢中になり、見さかいがつかなくなったようだ。
社員の方は熱が冷めており、細君にもばれてしまった。
学校にも知れるところとなり、社員と経営者である友人、学校の関係者、それに双方の友人などが
それぞれの立場で介入してきた。つまり周囲の声が騒がしくなったということだ。

女子学生は電話やメールなどで社員に執拗に付きまとおうとし、社員は社員で無視を繰り返すものだから、
二人ともストレスが蓄積しノイローゼ状態になってしまった。

私などにしてみれば、まあ、こんな男女間のもつれはよくある話で、そしてたいていは時間が解決してくれる
ものだと思っている。ところが、友人や社員にとっては初めての経験で、うろたえるばかりだ。
「本当に自殺するのではないか」「訴訟沙汰になるのでは」などと真剣に悩んでいた。

二、三日してそれぞれの頭が冷えてきたところで、私は再び友人と会い、鴨川べりを歩いた。
「こんな話はこれまでに何億人かその何倍もの男女が繰り返してきたこと。水に流してしまえばいい」と、
慰めにもつかないことを言うぐらいしかできなかった。
友人は「そやな…昔から鴨川には無数の女の涙が流されたんやろな」としたり顔で頷いてくれた。
そして「ただし、鴨川の水はまだ冷たい。春になったら水も温むやろ」と付け加えた。

その通りで、春の訪れを待って、周囲の景色が変わり、女子学生の涙が乾くことを期待したい。

作家 津島稜