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JRの大事故と母親の奇跡

JR福知山線の事故から10年が経過した。
尼崎駅に近づいたカーブでスピードを出しすぎて脱線、線路脇のマンションに激突して、百人を超す死者を
出した。原因は運転士のミスとされているが、その運転士も死亡した。

この衝撃的な事故については多くの人の記憶に残っているはずで、未だに遺族とJR西日本との間で
補償問題が続いている。
事故直後から、JR西日本の社長らに対しての刑事裁判が始まったが、
被告の社長らに対しては「責任を問えない」という司法判断が示されている。
しかし、刑事、民事の訴訟は別にして、遺族側の代表とJR西日本が、検証を開始し、意見交換をしながら、
事故原因を調べたところ、当時のJR西日本の内部体質に多くの問題があった事実が明らかになりつつ
あるようだ。

実は、私もこの電車に乗り合わせるところだった。

私は当時、通勤のため尼崎駅の手前の川西池田駅を利用していた。
自宅を出ようとしたとき、たまたま母親が些細なことで私に声をかけ、その返事をしていて5,6分自宅を
出るのが遅れた。いつも乗る電車で間に合うだろうと思い、やや早足で駅へ向かった。
駅までは歩いて15分ほどで、いつも通りであれば電車が到着する3分ほど前にホームに立っている。

ところが、駅へ着くとすでに電車が到着しており、慌ててホームへ降りたが、電車は発車したあとだった。
次の電車まで時間が長いため、仕方がないので近くにある阪急電車の川西能勢駅から梅田へ向かった。
乗り遅れた電車が事故を起こしたため、その後の電車は運転をやめ、乗客は振り替え輸送されたらしい
が、もちろん私はそれを知らない。

私は川西池田駅で、いつも先頭車両に乗っていた。
それにはバカな理由がある。
ホームの先端部分に喫煙コーナーがあり、そこでタバコを一本吸うと丁度電車が到着するからだ。
当然、私は先頭車両に乗ることになる。
ホームに設置された灰皿の周りには、いつも数人の乗客が私と同様にタバコを吸い、先頭車両に乗る。
名前も知らないし、挨拶もしたことが無かったが、その数人は全員死亡したはずだ。

事故を知ったのは、母親からの携帯電話だった。
私が事故車両に乗っていたのではないかと心配していたという。
それで、事務所のテレビで初めて事故の概要を知ったのだった。

母親が声をかけてくれたお陰で事故に遭うのを免れたわけだが、あの「タバコ仲間」の悲運には心が痛む。
その母親は4年前に他界した。だが、私は未だに禁煙をしていない。
母親の叱声が聞こえてきそうである。

作家 津島稜