「包装」を通じ、あらゆる産業に貢献します。
>>トップページ  >>>NEWS  >>TOPページ
 ・新商品情報
 ・エンゼルコフィン
 ・ほかんくん
 ・宮下隆二のコラムTOP
 ・津島稜の世相を斬るTOP
 ・News VoL.1〜VoL.20
 ・News VoL.21〜VoL.40
 ・最新のNews一覧
 
 

少年残虐殺人の犯人が手記を出版

神戸市北区、六甲山の麓にある小学校の正門前に男児の切断された首が置かれていた事件は、
未だにおぞましい記憶として多くの人の心に残っている。

もう、二十年ほど前の事件だが、残忍な手口、社会を愚弄した意図や動機は誰にも理解できなかった。
捜査員にしても犯人像を絞り込むのに、かつて経験したことのない模索を続けなければならなかった。
しかし遺留品の鑑識、付近の聞き込みなどの基礎捜査のなかで異常行動をとる人物が浮かび上がってき
た。それは、現場近くに住む少年だった。

その少年は、少女を襲ったり、猫などの小動物を虐待したという異常行動が明らかになっており、
友人らに犯行を仄めかしていたのだった。
「サカキバラセイト」という犯行声明文を送りつけてくるなど、精神異常を窺わせる自己顕示欲も顕著だっ
た。

だが、捜査員はそれ以外にも多くの証拠から、少年を殺人犯と断定し、逮捕した。

逮捕後、少年は「僕は少年だから、すぐにヒョイと刑務所から出てくるよ」といった手紙を友人に宛てる
有様で、反省はおろか、少年法の特性まで学習して処罰も軽いと見越していたようだ。
そうした少年の態度は、当然警察や検察、そして裁判所の心証が悪く、少年の思惑とは裏腹に長期に
わたる獄中生活を強いられている。

それにしても、首を切断されるという凄まじい恐怖を味わった被害少年に対して微塵も悔悟の情を表すこと
もなかったことが信じられない。当時、被害少年の家族は、取材のテレビカメラの前で、声も言葉も発する
ことができないほどのショックを受けていたのを覚えている。

事件から長い年月が経過した。獄中から被害少年の家族に「反省している」といった内容の手紙を何度も
書き、矯正の効果も自己アピールしていたようだ。
その少年も三十代半ばの男になり、被害者の家族も男に対して諦観が芽生え、事件を何とか忘れようと
いう境地になりかけていた。

ところが、男は事件の詳細と、自己の独善的な思いを手記として出版した。
獄中であれやこれやと書き溜めていたものらしい。
残忍な犯行の手口や被害者の様子、遺体の具体的な状況などを興味本位で読む人もあるだろう。

案の定、出版された本はマスコミの報道もあり早速のベストセラーになった。
出版社は狙い通りの、あるいはそれ以上の収益に溜飲を下げているに違いない。

当然のように出版に対しての反響は大きく、表現の自由、出版の良識、プライバシーの尊重などの意見が
渦巻いている。たしかに文学的、哲学的、社会的な観点から難しい問題がある。
著者の自己顕示欲なのか、金銭目的なのか、懺悔なのかといったところは不明にしても、
忘れてはならないことがあるだろう。
それは言うまでも無く、被害者遺族の心情だ。
この期に及んで、何という残酷な経験をさせられたのかという苦悶は、私たちにとっても辛い。

作家 津島稜